「FIRE 最強の早期リタイア術 最速でお金から自由になれる究極メソッド」を読んだ

FIREとはFinancial Independence, Retire Earlyの略で、簡単に言うと十分な不労所得を確保することで経済的自立し、仕事を早期リタイアして自由な時間を手に入れることです。自分は今のところ早期リタイアするつもりはないのですが、実際に早期リタイアした人の話を知ることでお金について新しい考え方を身につけられるかもしれないと思い、本書を手に取ってみました。

本書の内容

箇条書きで軽くまとめてみます。

  • 基本として貯蓄・節約によって貯めた資産を元手にインデックスファンドへ投資し、資産を増やして経済的自立を目指すことになる。
  • POTスコア=(給与の中央値−最低賃金の差額)÷ 学位にかかる総費用
  • POTスコアが高い(学位が収入に与える費用対効果が大きい)キャリアを選ぶことが大切。
  • 家は様々なコストがかかるので買わない。可能な限り賃貸にする。
  • 車も買わない。
  • 借金はしない。既に借金がある場合は最優先で完済する。複利の力を敵に回すと危険。
  • インデックスファンドは手数料が安く、85%のアクティブファンドを上回る運用成果を出す。
  • 現代ポートフォリオ理論に従ってポートフォリオを設計する。
    • アセットアロケーション(株式や債券などの割合)を決める。例:株式6割、債券4割
    • 投資対象のインデックスを決める。S&P500、FTSE Global All Cap Indexなど。特定の国・地域(特に自国)にオーバーウェイトしすぎないように気をつける。
    • ファンドを選ぶ。投資信託かETF。手数料を抑える。
  • リバランシング:市場の高騰や暴落によって資産の割合があらかじめ決めておいたアセットアロケーションから大きく逸脱し始めた場合、割合が大きくなりすぎた資産を売却し、割合が少なくなりすぎた資産を購入する。
    • 例:「株式6割、債券4割」のポートフォリオが株価の下落によって「株式3割、債券7割」になった場合、債券を売却し、株式を購入することで元の「株式6割、債券4割」に戻す。下落時に株式を安く買い増すことで後の回復期に早く資産が復活することが期待できる。
    • リバランシングは機械的に行う。感情に流され下落時に株を売って回復期に利益を逃すようなことがあってはならない。
    • 株式100%のアセットアロケーションだとリバランシングができない。株式以外の資産もポートフォリオに入れておく。
    • 個別株をポートフォリオに入れてはいけない。インデックスファンドと違い、個別株はゼロ(倒産)になり得るため、株価下落時のリバランシングで個別株を買い続けると資産がなくなる可能性がある。
  • 4%ルール:運用しているポートフォリオの4%の資金で1年の生活費を賄えれば、毎年4%取り崩しても95%の確率で貯蓄が30年以上持続する、という研究結果がある。
    • ポートフォリオの4%の資金で1年生活できるようになるために、25年分の生活費相当のポートフォリオを作り上げる必要がある。
  • 早期リタイアまでの年数は年収ではなく貯蓄率によって決まる。貯蓄率が上がれば投資金額も増え、リターンの複利の力によって早く目標の金額に到達できる。
    • 貯蓄率を上げるために収入だけでなく節約も重要となる。
    • 数パーセントの貯蓄率の変化だけでリタイアまでの年数が数年も変わり得る(10%等低い貯蓄率の場合に顕著)。
  • シークエンス・オブ・リターン・リスク:4%ルールは5%の確率で失敗する。退職後の最初の数年に下落相場が発生すると、資産が大きく目減りしていく中でも生活費のために資産を売却しなければならず、ポートフォリオを大きく毀損してしまい、相場が回復局面に入っても資金を取り戻せなくなる。
    • 対策として「現金クッション」と「利回りシールド」で備える。
  • 現金クッション:下落相場になった時に生活費として使う現金。下落相場時に生活費のためにポートフォリオを大きく取り崩す必要がなくなる。
    • 過去に株式市場が暴落から立ち直るまで最大5年(世界恐慌時)かかっている。
    • そのため5年分の生活費の現金クッションがあると安心。
    • しかしポートフォリオとは別に5年分の現金を用意するのはかなり大きな金額となる。対策として「利回りシールド」を利用する。
  • 利回りシールド:一時的にポートフォリオの資産の中心を高利回り資産に置き換え、分配金を増やす。
    • 投資信託やETFの分配金を現金クッションの一部として使うことで、現金クッションのために用意する資金を抑えられる。
    • 高利回り資産には、優先株、REIT(不動産投資信託)、社債、高配当株のインデックスファンドなどがある。
    • ボラティリティが上がるという欠点がある。
  • 地理的アービトラージ:物価が高い国に住んでいる人は、東南アジアなど物価が安い国に移住したり一年中旅行している方が年間の支出を抑えられる。
  • 子育てしている人でも経済的自立したり年中旅行したりしている人達もいる。
  • 早期リタイア後も副業を始めたりパートタイムで仕事に戻るという選択肢も考慮する。フルタイムの仕事よりも自由な時間を確保しつつ資産にも余裕ができる。

感想など

  • 著者がカナダ在住のため税金などの面で日本と違う点があるが、アイディア自体は日本でも概ね実行可能だと思う。
  • 節約重要。早期リタイアを目指すかどうかはともかく自分の支出を詳細に把握してみようと思った。
  • フルタイムで働いている間は分配金を受け取るよりも投資信託で分配金を自動再投資しつつ資産の増加に期待したほうがいいと思う。しかし退職時に高分配のETFや投資信託へ鞍替えすると投資信託の売却時に課税されてしまうため悩ましい。
  • カナダではETFの方が手数料や経費率の面で投資信託よりも有利らしくETF一択とのことだが、日本だと海外ETFの外国税額控除の手続きが必要だったり為替手数料を考慮する必要があったりするため一概にどちらがいいか言えないと思う。
  • 利回りシールドは生活費用の現金(の一部)を分配金に頼る戦略だが、下落相場時に投資信託やETFの分配金が著しく下がる、または支払われない可能性はどれくらいあるだろうか?
  • 前半の著者の育った環境の話(中国で1日44セント生活)やお金に関する持論(お金は世界で最も大切)は単純に興味深かった。

終わりに

分配金の下落の可能性など、実践する上でいくつか疑問点は残りますが、早期リタイアへの道を可能な限り再現性のあるやり方で紹介している点は評価できると思います。FIREに興味がある方は読んでみて損はないのではないでしょうか。

ちなみに著者は「お金は世界で最も大切」と言及していましたが、「金は命より重い・・・!そこの認識をごまかす輩は、生涯地を這う・・・!!」とは言っていませんでした。